今の誠十郎には木枯らしの刺す冷たさも走る事で火照った身体がやんわりと防ぐ。
きょう、高校入試のテストの為に誠十郎は北臥竜駅から歩いていた。志望の公立高校まで15分と書かれたスマホの画面を見ながら歩く。地図アプリには慣れてないせいか悪戦苦闘しながらの歩きスマホだった。
目はスマホ画面に釘付けで対面で歩く人達の方が誠十郎を避けていた。
誠十郎は、この15分で着けばギリギリで間に合う。
急がなきゃ!
この言葉を言うと再び自分のスマホを見ながら進む。

ドンっ!
と腹に小さな衝撃が走った
何かな?
と見ると小学生低学年の男の子が自分の右腕を掴みながら倒れていた
「大丈夫?」
との誠十郎の言葉に
「だ…大丈夫じゃねー!歩きスマホなんかしてんじゃねーよ!」
子供の叫び声に誠十郎はムッとしながらも
表情では微笑で
「ゴメン、ゴメン急いでたもんで…」
と言い切らないうちに子供はい「痛い、痛い」と何度も呻き始める
周囲がザワツキ、1人の女性が子供に「大丈夫?」と聞く
子供は「痛いよー」と泣くばかり
救急車が来て誠十郎と共に病院へ行った。
母親に連絡をすると救急車は病院に着いた
医者が子供の診察をしている間、誠十郎は茫然と待合室で立っていた。
駆け付ける子供の母親。
ファルディアが言う
「こっちから慰謝料を請求しいちまえ!受験に遅れちまったじゃねーか!」
プーカ
「口説いてみろ。結構美人だぞ」
💢「テメー。それでも天使かよ!」
プーカは真顔で怒った
「天使じゃねー!」
ファルディアはしみじみと
「やはり…」
そしてプーカはかぶせ気味に
「美の神だ。この神々しい…アレ?お~いファルディア君?」
プーカが言い終える前に診察室のドアが開く
子供の母親はいそいそと入っていく
同時にファルディアも入った

警察が事情聴取をするのは誠十郎の母親が病院についてからだ
誠十郎は全てを正直に話した
今日は高校の受験の日だったこと
遅刻寸前だったこと
スマホで地図アプリを見ながら歩いていた事
あとは前述の通りだ
それでも歩きスマホは理由にならない
と誠十郎は謝った
ファルディアは言う
「よそ見してた子供が悪い。俺は悪くねー!と言え」
プーカ
「あの看護師とあの看護師、どっちが権力があるか。賭けよーぜ。と言え」
と、ファルディアは怒っていない
いや、それどころか身体をフルフル震えさせ、顔が青ざめている
何故か?
誠十郎母が子供と子どもの母親に土下座を始めたのだ
それを見ているファルディアの目には涙が溜まっていた
子供と子供の母親の呆気に取られた顔
警官たちの“そう来たか”の顔
そしてファルディアは誠十郎母の姿に釘付けになっていた
思い出していたのだ
ファルディアのフラッシュバックが周囲を包む
その時、プーカはファルディアを見つめながら小さく微笑んでいた

そこは一面、雪の世界、小さな村に居た

第1話「天使プーカとの出会い」

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第2話「天使の夜道」

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第3話「スパイする天使」

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第4話「プーカの正体」

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第5話「逢引き」

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第6話「優しい誠十郎」

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第7話「スクールヴァルナの誠十郎」

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第8話「誠十郎、精一杯の切実」

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第9話「誠十郎、夜に駆けなさい」

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第10話「恋と誠」

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