1973年生まれのまる男は小学校1年の頃から、ある理由でプロも通うボクシングジムで学校以外、ボクシング漬けだった。そして、中学校、友達に誘われて野球部に入る。運動神経は怪物だけど、常識のだいぶずれた少年と少し奥手な仲間たちの物語である
ロングセラーまる男
古典の授業が終わったあと
まる男と角郎と垂也が、またさわいでいる。
古典の授業では源氏物語が題材だった。
ヤリチンの光源氏の生き方に角郎は嫌悪感を抱いた。
清純な心からではなく単なる嫉妬からだけどね。
その時、まる男が言う。
「源氏物語は世界一のロングセラー小説なんだって」
角郎は源氏物語をほめるまる男にイラっとして反論する。
「いや、聖書があるだろう。あれこそがロングセラーの世界一の書だろ!」
その声は教室に響き渡り、周囲の生徒が一瞬静まり返るほどだった。
2人は喧々諤々と議論を交わした。
垂也は1人
「俺は光源氏みたいな生き方がしたいな」
と呑気なことを言っている。
10分の休憩時間がすぐに終わり、討論は終わった。
放課後、部活の球拾いをしながら角郎はふと足を止めた。討論中のまる男の顔が思い出され、胸が痛む。怒りにまかせて論点をずらしてしまった自分が恥すかしい。
「ゴメン、世界一のロングセラー小説はたしかに源氏物語だ。聖書は小説じゃないからな。
ちょっと光源氏の生き方にイライラして論点ずらしをしたんだ」
それに対して、まる男が難しそうな顔で言う
「なあ、ところでロングセラーって何だ?」
湿った不快感をもたらす梅雨が終わったこの時期、垂也は例年通りミニスカート姿のテニス部に夢中だ。

コメント