第9話


付き合った、けど上司に取られてフラれた(後編)


入社して1年が経ち、誠十郎はもう既に毎月の営業成績は常にトップだ。

30代後半の部長の再来だ。とも言われてる。

部長はもう重役候補として準備を始めていると聞く。誠十郎はそれでも会社には最後まで居た。この頃は資料を読むだけでなく、沢山のタスクをこなす毎日だ。週末は綾香先輩の部屋で気兼ねなく寝転がっていた。綾香先輩は誠十郎の為にいつも家事をしてる様だ。

様だ。というのは誠十郎はいつも新聞を読んだりテレビを見たりで綾香先輩の事ばかりを見ている訳ではないからだ。

充実した毎日

そう感じる誠十郎であった。


その時は突然来た。噂話が好きな20代後半の女子社員たちから聞いた話だ。確かに聞いた。部長と綾香先輩の結婚話だ。どこから、そんな発想ができるのであろう。綾香先輩は俺の恋人だ。社内に叫びたかった。しかし誠十郎自身が綾香先輩に言ったのだが2人の関係は内緒だった。皆が知っていれば後で面倒が起きるかもしれない。と。綾香先輩は「別れる前提なの?」と聞いて来たがそうでは無い。万が一の事だ、となだめた。その時は機嫌を損ねたがすぐにいつもの綾香先輩に戻る。やはり歳上なので大人なのだろうと、その時気にしなかったのが悪かった。

ある朝、部長と課長が朝礼で発表した話にショックを受ける。その日はいつもの如く仕事をした。

そして仕事が10時を過ぎて終わると綾香先輩の部屋へ行った。週末では無いが恋人同士なので良いはずだ。そう、恋人同士のはずなのだから。


綾香先輩の部屋の鍵を開けようとするとそれに気づいた。鍵を間違えた?いや部屋を間違えた?

どちらも大丈夫だ。しかしドアは開かない。強くノックをするとチェーンをかけたままで綾香先輩がドアから顔を覗く。「外で話しましょう」とマンションの屋上で話す。

色々と話を聞いた。こちらからも話したかった事は山ほどあったがずっと綾香先輩が話していた。

愛されてる実感が無い

要約するとそんなモノだった。


帰りにスマホを取り出すと同期で資料管理室の土沼を呼んだ。明日、夜、話を聞いてやる。その言葉を聞き電話を切った。しかし悲しく無い、何故だ?

今日は体の関係を持つ相手が欲しかった。

次の日、土沼と飲みに行った。話をすると

「そりゃ、お前が悪い。」

だそうだ。

そのままキャバクラへ行く。初めて行くが全て土沼に任せて豪華な店内に入る。緊張で胸がドキドキしていた。煌びやかなネオンの明かりが灯る外観を見上げ、ドアを開けると、落ち着いた雰囲気の中に華やかさが広がっている。思わず息をのむと、華やかな衣装をまとったキャバ嬢たちが笑顔で迎えてくれた。


次の日、誠十郎が会社でトイレから出ると綾香先輩がいた。「お疲れ様です」と頭を下げると体をぶつけて女子トイレに入る。何だよ。俺が悪かったんだろ?とそのまま仕事した。

帰宅してポケットに入ったメモを見るまで綾香先輩の事は忘れていた。疲れてるのにまた恨み言は聞きたく無い、とメモはそのままポケットに戻して風呂に入る。

そのまま見なかったメモだった。



そこで回想は終わり、湯船から出ると身体を念入りに洗った。

あの時は隙ができたのだろう

でも、歳上の女性からの仕打ちを忘れる事が出来たのは幸いだった。

仕打ち?そう考えてたのは誠十郎だけだ。と土沼の話だ。

俺はどこで間違えた?

そしてメモを読んでみた。

布団の中で考えたのは5秒程、そのまま眠りについた